顔を描くのは好きだし良く描くから得意!
でも体は描けない…練習しても上達しないし、苦手意識が強まるだけ…
人物イラストで体を描く時に苦手意識が勝ってしまい、身構えてしまう方は多いのではないでしょうか?
私も昔は苦手で…バストアップ絵ばかり量産させてました。
体を描くのが苦手な人は?
・どこから描き始めればいいか分からない
・そもそも練習方法が分からない
・棒立ちしか描けず、ポーズの付いた絵を描けない
・解剖学を勉強しないといけないのかな?…面倒だし難しそう
・デッサンやクロッキーは必要なのか?
…等々、それぞれ色々な悩みを抱えていらっしゃることでしょう。
きっとこの記事を読んでくださっている皆様は、次のステップに向かって一歩踏み出した勇気ある方々だと思います。
ここから先は私自身が身体を描くことに対して苦手意識が減り、逆に好きになったキッカケと実践して上達を感じた練習方法についてお伝えします。
あくまで練習方法であって『描き方』の解説ではないです
予めご了承ください
1.体を描く練習は人物クロッキーが最適
まず結論から言いますと、人物クロッキーを継続して描くことが最も効果的です。理由は以下の通りです。
・短時間で描ける
・全身を描くのが当たり前になる
・体を描くことへのハードルが下がりやすい
▽短時間で描ける
クロッキーといえばこれ、短時間で描けることが最も重要です。
短時間で描けるということは、描くハードルも精神的に低くなり、取り組みやすさに繋がります。
短時間と言っても、人によってタイムリミットに差はあると思いますが、調べてみたところ…
クロッキーとは
速写と言い、対象を素早く描画すること、またはそうして描かれた絵そのものを指す。スケッチともいうが、特に短時間(10分程度)で描かれたものをクロッキーと称する。
主に動物や人体など動きのあるものを素早くとらえる訓練として行われる。また、完成作品へ昇華させるための習作として行われる場合もある。
引用:ウィキペディア(Wikipedia)
私は1分以内、1∼2分、5分、10分と目的に応じて時間を変えています。
♦1分以内…印象(動きのベクトル)を捉えた線のみ
♦1∼2分…棒人間
♦5分…立方体、円柱などで簡易的に肉付けしたもの
♦10分~…着衣クロッキー
このように、目的と難易度によって制限時間を分けています。
ちなみに制限時間をきっちり守っているわけではありません。制限時間が過ぎてしまっても完成(全身描き切る)まで続けます。ただ、一旦制限時間でタイマーを止め、どこまで描けたか確認します。そして完成までかかった時間も最終的に記録します。
時間内に描けなかったものはスルーして、次に取り掛かる人もいると思います。ただ、それだと中途半端なものばかり量産され、成果物が増えません。苦手・難しいポーズを描きかけで放置していても上達しませんよね。私は制限時間が過ぎようとも、時間内に描けた分をサッと確認だけしたら、タイマー再起動して最後まで完成させるようにしています。
クロッキーに慣れてきたら、どの部分で筆が悩んでしまったか…
どこが難しいと感じたかなど振り返れたらベストですね
最短1分、長くとも10分程度であれば、まず物量をこなせます。
これがクロッキーではなく、普通に一人の人間を細部まで追って描く練習だったら?一人描き終わるのに30分~1時間…もっと時間をかけていたら?どうでしょう?
クロッキー1体(5分)×12体=1時間
普通に人物練習1体(頑張って2体)=1時間
6~12倍の差ですよ?物量の差すごくないですか?
棒人間だったら制限時間1∼2分でもっと物量に差がでることに…
昔は1体の人間描く練習に30分~1時間かけていたので、今思うとクロッキーとの圧倒的な物量差に寒気がします…
もちろん練習でなく、完成作品として一人の人物を描く場合は好きなだけ時間をかけて下さい。あくまで練習の場合は物量の多いクロッキーがおすすめということです。
▽全身を描くのが当たり前になる
当たり前ですが、クロッキーで常に全身ポーズを描いていれば、体を描くことに慣れます。
それが例え棒人間ばかり描いていたとしても、です。
棒人間に立方体や円柱を描き加えれば、より人間に近づきます。
棒人間は言わば人物を描く上での『核』であり、最も重要なポイントです。自然なポーズの棒人間が描ければ、肉付け後は最終的に自然なポーズの人間に変身します。
棒人間クロッキーで気を付けること
・頭身や各パーツの長さ、大きさ合っているか
・各パーツの前後感(アングル)が出せているか
→線(腕、足)や楕円(頭、胸郭、骨盤)の圧縮度、位置関係を変化させる
・どんな動作をしているかなんとなくでも分かる
棒人間を描く時も、最低限上記のポイントを意識して描くようにしましょう。
そうすれば人間に近づきた棒人間が描けると思います。
世の中デジタル作画が増えてきた時代、気軽に編集可能なので絶対必要な練習ではないですが…アナログ民様はやっておいたほうがいい練習方法として…
♦紙に全身が綺麗に収まるよう描くこと
初心者が全身絵を描こうとしてやりがちな事が、紙のサイズに合わせられないことです。
・紙のサイズに対して小さく描き過ぎた
・全身が入りきらなかった
経験ありませんか?これは人物の頭身を考えて描けていないのが原因です。
紙のサイズに対して、頭をどれくらいのサイズで描けばバランス良く全身収まるのか。
考えながら練習をすると、思い通りのサイズで人物を描く能力が身に付くと思います。
▽体を描くことへのハードルが下がりやすい
最初は棒人間ばかり描いていても良いのです。
1∼2分なら数分の産物。失敗しても痛くも痒くもないでしょう?
かかった時間が短いから、失敗して思い通りのポーズが描けなくともアッサリ諦められる。連続で同じポーズを描くことだって苦じゃない。失敗に諦めがつきやすいから苦手なポーズも手軽に挑戦できる。
結果的に体を描くことへのハードルが下がりやすくなります。
なんか上手く描けなかったなぁ…まぁいいや。次々~
お、知らぬ間に苦手な座りポーズ10体も描いてる!棒人間だけど!
1時間かけて描いた失敗と、数分で描いた失敗の精神的重みは全く違います。少しでも精神的重みの少ないクロッキーで物量をこなし、体を描くことへのハードルを下げることで、徐々に完成作品の描画力も向上するでしょう。
2.クロッキーに本当の意味で出会ったキッカケ
私も過去に何度かクロッキー経験はありましたが、正直全く上達の実感がありませんでした。当時はひたすら時間内に終わらせるという感じで…。
クロッキーの正しい描き方というか、指標になるようなものもなく、練習しても無意味なのでは?と思っていたくらいです。
ポーズは固いし、不自然さが滲み出てる
全体的なバランスが取れていないのに、細部だけ頑張っている…
そんな私ですが、あるYouTube動画に出会ってからクロッキーの大切さを実感することが出来ました。
それがhide channelというアニメーターさんが運営しているチャンネルです。たまたま「簡易クロッキー」という約10分で8~9体を描く動画を発見し、見入ってしまいました。
今までは描き方も分からず、体のアウトラインを追って描いていたのですが、hide先生は人物の全てのパーツを立方体・円柱・円錐・球体など簡易的な形で描いていました。それでも自然な動きに見えるし、線がより単純で分かり易く、何より各部位のアングル(角度)が分かり易い!!
この時、クロッキーに対して指標が見つかり
パァ!!と脳内に光が差しました
最初はhide先生の動画をスローモーション設定にして、先生の手元を見ながらパーツごとの描き方を練習しました。その後同じ方法で実際にポーズ写真を見て描いてみました。するとどうでしょう?描き方を学んだおかげで描きやすくなりましたし、何よりポーズ写真の観察の仕方も変わりました。
【2021年クロッキー】
さらに2022年後半にもう一人の先生を見つけました。
『10パーセントの力で描く はじめてのジェスチャードローイング』という
砂糖ふくろう先生の著書です。
これもキッカケはYouTubeで、当時はポーズ動画を探していました。
そしてGESDRAWPartyというチャンネルを見つけ、さらに静止画サイトもあることを知り、クロッキーのポーズ参考にしていました。最初はそれだけだったのですが、しばらく月日が経ち、本屋でふと気になった本を手に取ると、GESDRAWPartyのモデルさんを参考にしたクロッキー本でした。
チラッと読んでみると内容が面白くテンポ良く読め、自分の知らなかった新たな知識が記載されていた為、即購入
この本では「印象を大事に」ということを学びました。見たままを描くのではなく、ポーズのどの部分・ラインに印象を強く感じたか。それを意識して線を引くだけで動きがより誇張されて、生き生きしたクロッキーになることを知りました。
印象の線だけなら1体1分以内で描けるから、楽勝で物量描けるね
このようにクロッキーは、ただ何となく時間内に描くよりも、より効率的に簡易的に描く方法を学び実践してみると、より結果に結びつくと思います。
※『10パーセントの力で描く はじめてのジェスチャードローイング』という書籍の実践レビュー記事はまた後日記事にあげる予定です。
3.解剖学を学んだだけでは体は描けない!?
これ、事実です
経験者は語る、です
決して解剖学を学ぶことに関して反対しているわけではなく、むしろ人物を描く上で大切な知識だと思っています。ただ、学ぶ順番を間違わないように気を付けて頂きたい。
私の経験談になりますが、自分は理学療法士という資格を取得する為、医療系の短大へ3年間通い、解剖学や運動学など専門知識を学びました。在学中は絵を描く暇もない学生生活だった為、ほとんど絵を描かず社会人になりました。社会人になり時間に余裕も出来て、いざ「絵を描こう!」となった時、体を描くことへの苦手意識がほんの少し減っているような気がして…というのも、自分の過去絵や他人の絵を見て、解剖学的に不自然な部分に気づけるようになっていたからです。
この時は「やっぱり体を描くには解剖学知識が大事!」と思っていました
実際にそれなりに見れる程度には描けていたからです
【2018年鉛筆イラスト】
今見ると体描けて無いなぁと思うんですが…当時はまぁまぁ描けてたと思い込んでいました。実際、似たポージングや正面からのアングルが多いことから、やっぱり苦手で描けないポーズは多かったようです。
当時の私は、まぁまぁ描けてるからいい。という惰性もあり、あまり苦手を追及してませんでした。
解剖学知識だけでは体が描けない理由に気づいたのは、hide先生の動画や砂糖ふくろう先生の著書に出会ってからです。
クロッキーをしていて、やっと…やっと気づいたんですが!?(本当、気づくの遅かった)
筋肉は所謂被せモノで、土台じゃないということ。筋肉自体はただの肉塊で、骨に付着して形を保っているだけ。骨が動けば伸び縮みして形が変わるし、見る角度によっても形が変わります。そんな複雑なものを、土台もなく描けるはずもなく…
だから当時、正面から見た棒立ちに毛が生えた程度のポーズしか描いていなかったのです…
描けていると錯覚していただけで、実際はあまり角度の付いていない立ち絵ばかり描いていたのです。
それは、様々なアングルでのポーズに対して、筋肉をどう付けていいか分からなかったのもありますが、そもそもポーズの土台である棒人間を描かずに、いきなり肉付けされた状態で描こうとしていたからだと思い至りました。
例えるなら、アタリもなく服を着た人物を描こうとするようなもの!!
筋肉とはディティールであり、服のような物です。土台(棒人間)があっての筋肉である為、最初に身に着けるべき知識ではないと、クロッキーを始めて思いました。
①様々なアングルのポージングを棒人間で描けるようになる
②棒人間に立方体や円柱など簡易図形で肉付け出来るようになる
この2工程を習得してから解剖学に手を付けても遅くありません。
全然遅くないです!むしろ、露出の多い服を描かない人は必要ないかもしれませんね。
この方法で人物の体を練習していき、最終的に必要と感じたら、その時解剖学の勉強をすれば十分だと思います。
【例えば…】手・腕・足はよく露出した状態を描くから筋肉を学びたいなぁとか。
ただ!!クロッキーを始める前に『これだけは身に着けておいた方が良い知識』があります。
4.体を描く練習で最初に学ぶべき知識は?
・人体比率
・関節部位
筋肉を知らなくとも人間は描けますが、この人体比率と関節部位の2点においては学んでおくべきだと思います。
人間ってどんな形?どんな見た目?
皆様はどんなふうに答えますか?
頭一つ、腕二本、胴体、足二本…
仮にこう答えたとしましょう。他にもっと真面な回答が出るとは思いますが…
上の回答のまま絵に描くと、下画像のように色んなパターンが生まれます。
どうですか?これ、全部各部位の比率を変えているだけです。
…人間に見えるのはどれでしょうね?
このように、比率が変わるだけで謎生物になることがお分かり頂けたと思います。
棒人間を描く時も人間の比率を守って描くようにしましょう。それが棒人間を人間らしく描く第一歩です。
また、各部位の比率は性別や年齢を表す手段でもあります。
例えば③と④は人間の比率で描きましたが、年齢差があることが見て分かりますよね?
人体の比率は筋肉を学ぶより最重要知識です。何故なら棒人間を描く時点で必要な知識だからです。
それともう一つ、人体比率と同様に関節部位についても学んでおくと良いでしょう。
余程ないと思いますが…関節部位ではないところで体は曲がりません。
各関節の場所と、余裕があれば可動域範囲(動く範囲)など知っておくと、より自然なポーズが描けると思います。
5.Dirgeのクロッキー足跡&まとめ
ここまで読んで下さりありがとうございました!
これ以降はクロッキーの年別足跡と、現在のクロッキー練習方法を動画付きで紹介していきます。
◇2018年
クロッキーでは無いですが、比較対象として再び…
◇2021年~2022年前半
hide先生の動画に出会った頃です。
道具:鉛筆(B~2B)、消しゴム
◇2022年後半~2023年
この頃に砂糖ふくろう先生の著書に出会い、棒人間のクロッキーも取り入れました。
道具:筆ペン、ミリペン(0.1)
2022年後半からは、ミリペンと筆ペンで描くようになりました。
それまで鉛筆(たまにデジタル)で描いていましたが、変更してからより一層失敗に諦めがつくようになりました。結果サクサク描けます。
着衣クロッキーは流石に筆ペン一発描きはキツイので、ミリペンで棒人間のアタリを取ってから筆ペンで本線を描いています。
まだまだ無駄な線が多いですが、徐々に観察眼の精度を高め、1発で思い通りの形を描けるよう練習を続けていきたいと思います。
以下のYouTube動画前半で実際に描いていますので、参考までに。
・体を描く練習はクロッキーが最適(物量がこなせる)
・解剖学知識(筋肉や血管、その他ディティール)は最後に学ぶもの
・最初に学ぶのは人体比率と関節部位(+可動範囲)
・サボりながらでもいいからクロッキーを継続すること!
毎日でなくとも良いのです。
2日に1回、3日に1回…
ちょっと忙しくて1週間に1回になっても。
…1カ月疎遠になってしまった!?
それでも良いのです。
ちゃんと復帰して再挑戦出来れば問題ありません。
間を開けてもいいからクロッキーを継続しましょう。
きっと描けるポーズが増えていくはずです!
気張らず、ゆる~くクロッキーしていきましょう。